基調講演・特別企画

基調講演

5月23日(火)

岡田随象(大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学)
遺伝統計学で迫るゲノム研究の新たな地平線

皆さんは、遺伝統計学(Statistical Genetics)という学問分野をご存じでしょうか?遺伝統計学は、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から研究する学問分野であり、一次的に処理されたゲノム情報を解釈・社会還元するための手段として注目されています。大規模疾患ゲノムデータに遺伝統計学を適用することで、疾患病態の解明や疫学の再解釈、ゲノム創薬へとつながる可能性が示されています。「いかに、早く、安く、正確にゲノム配列を解読するか」というゲノム科学の一大目標がNGS技術で達成されつつある現在、「どうやって、早く、安く、確実に解読したゲノム配列の意味を解釈するか」へと研究のボトルネックがシフトしています。そんな状況下で遺伝統計学がどんな貢献を果たしていけるのか、そもそも遺伝統計学をどうやって学べばいいのか、私自身の研究遍歴も交えてお話しさせて頂ければと思います。

5月24日(水)

工樂樹洋(理研CLST・分子配列比較解析ユニット)
NGSが拓き、分子系統学が照らす「反モデル」生物学への招待

生物を、研究者の探究活動の材料としてではなく、自然の一部、さらには、地球上の生命のあゆみの記録としてみるとき、「モデル」という言葉はあまりにも空虚である。NGSの登場とゲノム編集技術の普及によって、分子レベルの研究の幅は大きく広がったが、それは、モデルと非モデルを分け隔てるマインドから解き放たれた、自然全体を対象にする「反モデル」生物学の真の始まりでもある。この境地を存分に愉しむためのエッセンスとして、NGSをより深く知ること、そして分子系統の知識をベースに種間比較と向き合うこと、という2種類のリテラシーの重要性を掲げたい。本講演では、コア施設運営からの様々なこぼれ話を交えて、独自に進めている軟骨魚類サメのゲノム解析や、そこから見えてきたヒトや実験動物のゲノムの成り立ちについてのエピソードを紹介する。分子情報を扱う際に役立つ進化の概念や手法がライフサイエンス研究全体において果たす役割についても触れたい。
特別企画

5月23日(火)

松原謙一(大阪大学名誉教授)
ゲノム研究で日本にほんものの個人化医療ができるまで

〜過去・現在・そして10年後の生命情報科学を問う〜
松原先生は大阪大学細胞生体工学センター教授・奈良先端科学技術大学教授時代にヒトゲノム解析計画の国際機関HUGOの副会長を務め、日本におけるヒトゲノム解析の旗振り役になられました。また、DNAチップ研究所の代表取締役社長として、バイオベンチャー企業のパイオニアとして奮闘してきました。さらに、20年近く前に生命情報科学の重要性をいち早く認識され、国際高等研で情報生物学適塾を開催されるなど、後進の教育にも非常に熱意を注がれてきました。その塾生達は現在のバイオインフォの世界で活躍しており、今回の現場の会のスタッフにも名を連ねています。
本セッションでは、事前に議論したい内容を公募し、それを元に松原先生に「ゲノム研究で日本にほんものの個人化医療ができるまで」というタイトルで講演頂き、その後会場を交えて過去・現在・そして10年後の生命情報科学について議論していきたいと思います。


1980終わり近く Dulbecco
1990 HUGO などはじまる 国際協力事業 とにかくシークエンシング
2001とりあえず完成 2003完成版
それから15年 ゲノム研究の地平は大拡大。人々は個人化医療・個人化健康管理を求めている

ヒトゲノムプロジェクトはDulbeccoの思慮深い発言から始まった。(我々はがんについて沢山のことを知った。今ヒトの全ゲノムを知れば…)
それから35年。人々は日進月歩のゲノム研究のニュースを聞きながら個人化医療・個人化健康管理の時代が近づいている期待をしながら待っている。
研究者は…・。ゲノムを扱う巨大な地平にぽつぽつと塊が描いてある図が今のゲノム領域の地図だ。君たちはみんなここで興味深い領域を選び力いっぱい働きたいと思っている筈だ。若さに任せて素晴らしい発見を、開発を、そしてアイデアで世界をアッと言わせる楽しさを。そういう期待に応える場がここにある。
大切なのはこのどの分野も思いもよらないほどのスピードで広がっており、そのどこで働くにしても他からの助けが必要になっている、ということだ。そして、君の成果はひとの助けになる。
(繰り返しになるが)これからのゲノム研究は優れたひらめき、思考力、突破力、競い合うこと、助け合うこと…・の連続の筈だ。私はここに居る君らが大企業就職希望者のようにどこが伸びるか、どこを選べば当たりがよいかではなく、仲間と息の合った仕事を進め、その突破力でお互いに良い研究のニッチを作り上げてゆく、そういう生き方を選べるひとたちだと思っている。良いニッチにまかれた種はよく育つ。そしてこれを大きく包むのが世間の理解と協力だ。色んな期待があるにしても冒頭の「わたしたちは個人化医療・個人化健康指導に通ずる道を願っている」というのはその中でも大きなものだと思う。
もう一言付け加えさせてもらうならば、「私たちの国の将来の科学のありよう」を考えるのに必ずしも得意ではないこの国に小さくても大きくても、良いニッチを作ろう、おりおりにそう考えるエネルギーを保ってほしい。そこで可能ならば多少の時間を作って英国のGenomics England、米国のPrecision Medicin USAを読んでほしい。
https://www.Genomicsengland.co.uk/
The Precision Medicine Initiative Cohort Program-Building a Research Foundation for 21st Century Medicine
2017/5/2現在
内容は変更されることがありますので、ご了承ください。

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